住まいと化学物質(2)

前回は,住宅室内の空気汚染物質の中でホルムアルデヒドなど当面優先的に配慮すべき物質(優先取組物質)の主な用途,健康への影響等について解説しましたが,今回は優先取組物質の特性,具体的な低減方法等の基本的な考え方について解説します。


優先取組物質の室内濃度を低減する住宅建築の基本的考え方 / 実際の注文建築の際の留意点




優先取組物質の室内濃度を低減する住宅建築の基本的考え方

 室内の空気環境に配慮して健康への影響を低減していくための住宅建築の基本は,「適切な材料選択」,「適切な施工」,「換気・通風への配慮」です。下表のi〜vのような優先取組物質の室内濃度に関する一般的な特性を念頭とした上で,これらに配慮した設計が重要です。  実際に住宅を建築,購入,リフォーム等される場合,ユーザーは,「こうしたことに配慮した設計,材料選択がなされているか,また,設計段階で配慮されていたとしても建築現場で現実に正しく施工されているかが重要であること」を認識することが大切です。

設計・施工の際考慮すべき優先取組物質の室内濃度の特性
1.優先取組物質の室内濃度は,優先取組物質を放散する建材・施工材(接着剤,塗料等建築現場で使用する材料)の使用量が増えると優先取組物質の放散量も増えます。言い換えれば,優先取組物質を放散する建材・施工材の使用量を減らすことによって優先取組物質の放散量を低減することができます。

2.使用する建材・施工材を優先取組物質の放散量の少ないものを選択することによって結果的に優先取組物質の放散を低減することができます。

3.優先取組物質の室内濃度は,時間がたつにつれ次第に低減していく傾向があり,この低減速度は建材・施工材の種類,放散する物質によって異なります。

4.建材・施工材は温度が高くなると,優先取組物質の放散量が大きくなる傾向があります。

5.換気量を多くすることによって優先取組物質の室内濃度が希釈されて低くなります。



実際の注文建築の際の留意点

 住宅の化学物質対策については建設省が中心となって健康住宅研究会が発足され、「室内空気汚染の低減のためのユーザース・マニュアル」が公表(平成10年3月)されています。
 この中より実際に住宅を注文して建築する場合の留意点について紹介します。

(1)設計をする前に設計者へまず伝えること


1.化学物質に対して喘息やアレルギー症状を示すことが医師の診断により明確であれば,その旨を設計者に伝えてください。
2.家族を含めた自分自身の生活様式や習慣、例えば「暑がりで夏は冷房でほとんど窓は開けない」といったことを設計者に十分伝えることが重要です。


(2)設計をする段階で,間取りや窓の配置に配慮すること


1.間取りと窓の位置の配慮は,有効な通風・換気に重要ですし,また優先取組物質の室内濃度にも関係しますので,設計者と充分に検討してください。
2.同じ延べ床面積でも,間取りにより建材・施工材の使用量は異なります。例えば,構造上での耐力に支障のない範囲でリビングに吹き抜けを組み合わせたり,リビングとキッチン,リビングと和室を組みあわせるなど,空間に高さやゆとりを持たせると単位床面積当たりの建材・施工材の使用量を減らすことができ,結果として優先取組物質の室内濃度を低減できることがあります。
3.一般的に建材・施工材の温度が上がれば建材・施工材からの優先取組物質の放散量も増えるといわれています。特に夏季の日射の入り込みによる建材・施工材の表面温度上昇に配慮した計画が重要です。
4.例えば,西日を避けた窓の配置や,南面の窓には夏季の日照角度に応じた充分な長さのひさしを確保することが有効です。また,南側,西側への樹木の植栽も有効な場合があります。

室内空気汚染の低減のためのユーザーズ・マニュアル
「室内空気汚染の低減のためのユーザース・マニュアル」((財)住宅・建築省エネルギー機構)より


(3)構造や工法などの条件を把握すること


1.ユーザーは建築しようとする,住宅の構造・工法と住宅の気密性を設計者に説明を求めて,設計者に適切な材料選択,効率的な通風・換気計画を促すようにしてください。
2.住宅の構造・工法の違いにより使用されている建材・施工材の種類や量は異なります。このため,構造・工法毎にどのような材料がどれだけ使われているかを把握し,適切な材料選択のための目安をつけることが重要です。
3.さらに,住宅の気密性・自然換気回数を勘案し,機械換気の目安とすればより効率的な通風・換気の計画が行えると考えられます。

構造や工法の特徴と,どのような材料がどれだけ使用されているかなどの把握はなかなか難しいものです。そういう場合は設計者、施工業者とよく相談することがよいでしょう



「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1998年9月 第41号


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