木の腐朽(腐れ)

 木材には、「燃える」、「狂う」、「腐る」という特徴があります。これらは、通常、木材の欠点と言われています。住宅に使用する木材の腐れを防止するには材料、工法等の工夫が必要です。今回は木材の腐朽(ふきゅう)のお話です。


腐れ(くされ)と木材腐朽菌 / 腐れが起きやすい場所 / 住宅の水分管理 / 木材の防腐対策 / 家の新築には総合的な床下対策を!



1.腐れ(くされ)と木材腐朽菌


 腐れとは、木材腐朽菌によって木材質が分解した状態です。 木材腐朽菌には、主に木材のリグニンを分解して、白腐れを起こす白色腐朽菌 (カワラタケ、カイガラタケ等)と主に木材のセルロースを分解して褐色腐れ を起こす褐色腐朽菌(ナミダタケ、イドタケ等)の2種類に分類されます。  腐朽菌によって木材の成分が分解されていくと、木材の乾燥重量が減少し ます。腐朽が進行して健全なときの重量に対する重量減少が50%に達する と、もはや木材の強度はゼロとなります。

 木材腐朽菌の主な生育条件は、木材含水率(*)30〜150%、湿度 85%以上、温度5〜45℃、酸素を必要とし、栄養分は木材の主成分で あるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンです。

 これらのうち、温度及び酸素については人間が生活するためにも調整は 困難です。そこで、腐れ防止のためには、水分管理(木材含水率及び湿度 )及び防腐剤で処理するなどの措置が考えられます。

(*)木材の含水率は下の式のように示され、通常の水分と違い100% を超える場合があります


木材の   木材に含まれている水分重量(g)
含水率 = ────────────────―――――――――――×100
(%)   木材に含まれている水分がなくなった時の木材の重量(g)



2.腐れが起きやすい場所


 我が国は高温多湿の気候風土であり、特に暖かい地方では腐れの被害が 多いようです。

 住宅において腐れやすい場所は、床下、浴室、台所等の水廻り部分等の湿気が多い 場所で、このような場所は、腐朽と同時にシロアリの被害も受けやすい場所であり、 腐れ対策とともにシロアリ対策も必要です。



3.住宅の水分管理


 腐朽菌の生育を抑制するためには木材含水率30%未満の乾燥材 を使用することが望まれます。ただし、ナミダタケのように土中から水分を吸収 して、木材を湿らせながら腐らせる菌もいるので、安心はできません(下図参照)。

 住宅に使用している木材を脅かす水として、木材自身が持っている水のほかに 雨水、生活用水、結露水、土中水があります。

 これらから住宅を守るためには、勾配の大きな屋根、深い軒、高い床下が理想的 ですが、当面水廻り箇所の補修・点検を定期的に行うことが重要です。

 特に被害を受けやすい床下部分の換気が重要で、布基礎は、高さ30cm以上 にし、十分な換気口(布基礎5mごとに300cm2以上)を設置し、風通しを 良くしておくことが大切です。



4.木材の防腐対策


 木材の主成分はセルロース、ヘミセルロース及びリグニン ですのでそのままでは木材腐朽菌の格好の栄養源になります。そこで 木材腐朽菌が利用できないように防腐処理を施した木材を使用するこ とが効果的です。

 木材の防腐処理には、防腐薬剤を木材の表面に塗布する方法もあり ますが、防腐工場で加圧注入により木材の内部(通常木材の表面から 10〜20mm程度)まで防腐薬剤を注入する方法があり、この方が 優れています(写真参照)。

 ただし、建築現場で継ぎ手や仕口加工をした際には防腐薬剤が浸潤 していない部分が表面に出てくるので油溶性の防腐薬剤を塗ることが 大切です。

 構造用製材等のJAS規格では、防腐薬剤(防腐効果とともに防蟻 効果も有しており、規格では保存処理薬剤と呼ぶ。)として、クレオ ソート油、クロム・銅・ヒ素化合物系、アルキルアンモニウム化合物 系、銅・アルキルアンモニウム化合物系、ナフテン酸銅系及びナフテ ン酸亜鉛の6種類を規定しています。

 また、湿度や温度など使用状態を考慮してK2からK5の4種類の 性能区分を設けています(K1はヒラタキクイムシに対する防虫薬剤 を対象。K2からK5までは、数字の大きい方が防腐効果が大きく、 通常の住宅ではK2〜K4のものが使用されています。)



5.家の新築には総合的な床下対策を!


 家を新築する場合は、床下の換気を良くするなどの結露対策を行い ましょう。また、土台、柱及び筋交いなど地面から1m以内の部分には防腐処理し たJAS製品を利用すると安心です。また、これらの部位に防腐薬剤を加圧注入し た木材を使用することによる費用増加は僅かであり、通常の住宅建築費の1%以下です。








「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1997年1月 第31号


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