木材の種類(合板1)

 このコーナーでは,これまで森林の機能,木材の性質,林産物(合板,集成材など)の製造方法や用途などについて紹介してきましたが,今回からシリーズで,住宅に用いられる建材と林産物(合板,集成材,製材など)のJAS規格との関連について紹介していきます。
 まず1回目は,合板のJAS規格について紹介します。


1.合板とは / 2.普通合板の種類 / 3.普通合板の表示




1 合板とは

 合板(plywood)は,木材(丸太)を 大根のかつらむきのように薄くむいた単板(veneer)を図1のように木目(繊維方向)が直交するよう奇数枚重ね,接着剤で貼り合わせて造ったものです。
 なぜ単板を直交して重ね合わせるかというと,木材は,厚さ・幅・長さそれぞれの方向で,伸び縮みする量が違うため1枚の板では反ったり,曲がったりするという欠点があります。そのため,単板を繊維方向が直交するように重ね合わせることによって,それらの欠点を補うことができるからです。また,強度の面でも同じ厚さの1枚の板に比べて合板は,繊維方向が直交しているため割れにくくなっています。
 また,合板にはいろいろな種類があり,JAS規格では大きく普通合板(広義)と特殊合板に区分し,更に,普通合板,特殊合板を細かく区分しています。


2 普通合板の種類

 合板の表面に化粧を目的に優良天然木の単板を貼ったり,プリント加工したり,ポリエステル樹脂を塗布するなどをしていない木地のままのものを,広い意味での普通合板といい,これを細かく分けると以下のようになります。


(1)普通合板
 食器棚,タンスなどの一般的な用途に広く使われる,(2)〜(4)を除いた合板で,今までは,主に表板には節などが少なく,また,むき肌のきれいなラワン,シナ,カバ,ブナなどの広葉樹が多く使用されていました。しかし,最近ではこれらの広葉樹の不足に加え針葉樹の有効利用の観点から,表板に針葉樹を使用した製品も増えつつあります。
 JAS規格では,表板に主に広葉樹を使用することを想定した規格になっていたため,針葉樹を使用することが実際にはできませんでした。このため,針葉樹を表板に使用した製品もJAS規格で対応できるようにするため,表板に針葉樹を用いるための見た目の品質の基準を取り入れた規格へと改正され,今年7月施行されました。

(2)コンクリート型枠用合板
 普通合板に比べて同じ厚さのものでも曲がりづらいという性能を有し,コンクリートの打ち込み時の型枠に用いられる合板です。表面に塗装などをしたものと無処理のものがあり,一般にコンパネと呼ばれています。住宅の床などの下地材として使用されることがありますが,可能な限りそういった用途には構造用合板を使用することをおすすめします。

(3)構造用合板
構造用合板は,普通合板に比べて曲げ強度やせん断強度などに優れた合板です。主に2 ×4(ツーバイフォー)工法住宅などの建築物の構造耐力部材(壁,屋根,床の下地材)として用いられますが,最近では,我が国の伝統的な工法である在来軸組工法住宅の筋かいの代わりとして壁や床下地などにも使用されることがあります。
 近年,国内外から針葉樹合板への対応や建築基準の性能規定化(作り方に関係なく最終製品が要求されている性能を確保していればよい)の動きを踏まえ,構造用合板のJAS規格を強度や耐久性,材料の性能などに着目した規格へ改正され,今年7月施行されました。

その他の合板
上記の他,特殊建築物,常時火を使用する箇所に用いられる難燃合板,展示場および舞台の大道具用として用いられる防炎合板(消防法の防炎材料)があります。


3 普通合板の表示

 JAS製品の表示については,下図のようにそれぞれJAS規格ごとにJASマークのデザインおよび表示すべき事項が決められています。
 しかし,この表示はJAS格付された製品だけに義務づけられているもので,JAS製品以外の合板については,このような表示をする義務がないため,全く表示のない製品もあり,どのような場所(環境),用途などで使用可能な製品なのかわからないのが現状です。
 今回は,DIYショップやホームセンターな どで売られている普通合板と建築用として使用されている構造用合板のJASマークを紹介します

(1) 普通合板のJASマーク
・ 類別は,接着の程度※に関する表示で1類,2類または3類と表示されています。
・ 等級は,表面の見た目の品質に関する表示で1等または2等と表示されています。
・ F1は,ホルムアルデヒド放散量に関する表示で,放散量の少ないものからF1,F2,F3となっています。
・ 格付機関とは,JAS規格に適合しているかどうかを,検査した機関です。
・ 上記の他に,幅と長さの寸法,品名(「普通合板」)および製造業者名が表示されています。また,防虫処理された製品には,その旨の表示がされます。

(2) 構造用合板のJASマーク
・ 類別は,接着の程度※に関する表示で,特類または1類と表示されています。
・ 等級は,表面および裏面の見た目の品質と強度に関する表示です。
・ 上記の他に,幅と長さの寸法および製造業者名が表示されています。また,製品によっては,普通合板のようにホルムアルヒド放散量や防虫処理に関する表示のあるものもあります。

※接着の程度
 合板は,単板を接着剤で貼り合わせて造るため,接着の強度が合板の生命であるといえます。
 JAS規格では,接着強度を保証するため接着層の耐水性能により,特類から3類までの4種類に分類されていますので,使用する場所(環境)によって使い分けることが大切です。

@ 特類は,屋外または常時湿潤状態の場所(環境)で使用可能な合板で,主にフェノール樹脂接着剤を使用しています。(主に,外壁,屋根下地材として使用されています。)
A 1類は,断続的に湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板で,主にメラミン・ユリア共縮合樹脂接着剤を使用しています。(主に,コンクリートの型枠用として使用されています。)
B 2類は,時々湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板です。(主に建築内装材,家具用として使用されています。)
C 3類は,極めて希に湿潤状態となる場所(環境)において使用可能な合板です。(一般建築に使用されることはなく,鏡台などの裏板として使用されています。)



「大きな目小さな目」(全国版)(農林水産消費技術センター広報誌)1999年9月 第47号


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