木造住宅の耐震性

 阪神・淡路大震災は,住宅に未曾有の被害をもたらしました。

 「天災は忘れた頃にやってくる」という言葉があるように、いつまたその牙をむくか分かりません。そこで、地震の際の住まいの被害を最小限に抑えるにはどのような住まいづくりをしたらよいのか,木造住宅の耐震性について考えてみましょう。


表 集成材の種類・特徴・おもな用途 / 住まいづくりでのポイント



表 集成材の種類・特徴・おもな用途


 通常住まいにかかる力は、風、雪、自重(建物自体の重さ) などが考えられますが、突発的な力として地震などがあります。  それでは,住まいはこの力に対してどのように対応しているので しょうか?

 在来木造住宅では、柱、梁、土台などの構造部材へ分散して 力を伝え、最終的に地盤へと伝えることで対応しています。 つまり、構造部材が力の通り道となっているのです。



住まいづくりでのポイント


 力の伝わり方が分かっていれば、 後は力が上手く伝わる環境を作ればいいのです。  次の10項目はこれから住まいを建てられる方は 今後の参考に、現在住まいをお持ちの方は今の住まい に当てはめて考えてみて下さい。




1 バランス良く壁が配置されていますか?


 大きな窓などはデザイン的にひかれますが、 壁(耐力壁※)に開口部を設けることとなります。 開口部のバランスが悪いと耐力壁に力が均一に伝わらないために、 部分的に大きな負担がかかります。  バランスが採れていたとしても壁と壁との連結が不十分 であると同じことが言えます。

※耐力壁:  住まいの壁の中で力を負担するための壁のことで、 筋かいを入れ たり、パネル(合板など)を貼ることで部屋を区切るだけの間仕切り 壁よりも強くなっています。

2 建物の形は単純ですか?


 建物の形は平面的にも、立体的にも複雑になるほど バランスが悪く、力の伝わり方も均一になりにくくなるので、 1と同様に部分的に大きな負担がかかってしまいます。



3 地盤はしっかりとしていますか?


 地盤が弱いと地震の時の揺れが大きくなったり、 傾きの原因になります。そのため軟弱地など地盤の悪い所 では地盤改良などが必要になります。

 これは舗装された道路の上のほうが柔らかい田んぼの中より もバランス良く立っていられることからも容易にわかると思います。


4 基礎はしっかりと造られていますか?


 基礎をしっかりと造ることで、上に建てられる住まいは バランス良く建っていられます。

 鉄筋をしっかりと入れ、壁下に沿って連続した基礎をしっかり造らな いと、いくら住まいを強くしても足下をすくわれることになります。


5 構造部材はしっかり固定されていますか?


 部材同士をしっかりと固定していないと、大きな力がかかった時 にはずれてしまい、力が地盤まで 伝わらなくなります。

 基礎と土台はアンカーボルトで、部材同士は接合金物でしっかり と固定することで、大きな力がかかっても部材同士がはずれたり することを防ぎ、力の伝わりが途切れることを防ぎます。


6 住まいは骨太ですか?


 柱などの構造部材は力を伝えるために十分な太さが必要となります。 特に2階建て、3階建ての住宅などは自重も増えることから、 構造部材の太さと併せて耐力壁を増やすなどするとより効果的です。


7 床や屋根はしっかりと作られていますか?


 床や屋根も住まいにかかる力を構造部材に伝える働きをしています。

 吹き抜けのリビングなどは開放感もあり憧れますが、 吹き抜けなどの開放スペースを作るときは火打ち材 (斜材)などで補強することが必要となります


8 防腐・防ぎ(蟻)処置はしていますか?


 木材はシロアリに食害されたり、水分を多く含むことで腐りやす くなったりします。これらは、薬剤処理などをすることで 防ぐことができますし、住まいの換気に気を付けて木材を 乾燥させた状態にしておくことも効果的です。


9 住まいの構造に費用を掛けていますか?


 住まいは外面(デザイン)も大事ですが、内面(構造)がしっかり していないとせっかくの住まいも短命に終わるかも しれません。

 そのためにも、建物の強度にかかる費用は節約しない ことが必要です。


10 入居後のメンテナンスはしていますか?


 建物の性能は建てられた時点から衰えていくものです。 自分でメンテナンスするのはちょっと・・・と敬遠しないで 、床下を覗いて土台が腐っていないか、部材同士の接合部分が 浮いていないかなどをチェックするだけでも随分違います。 私たちが定期検診や、人間ドックを受けるのと同じで定期的 なチェックをすることであなたの住まいを守ることができます。

 この10項目で必ずしもあなたの住まいが守られるわけでは ありませんが、住まいは大切な財産です。地震で壊れるような ことがあってはなりません。設計士や建設会社の担当者の方と 相談しながら、住み良く、地震に強い住まい造りをすすめて下さい。

参考資料:「地震に強い住まいづくり」(住宅金融公庫東京支店)



「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1999年5月 第45号


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