日本の森林・林業

 森林は、林業生産活動等を通じて適切に整備され、木材の供給、国土の保全、水源のかん養等様々な機能を発揮することにより、安全で快適な国民生活の確保に貢献しています。
 日本の森林資源は、戦後、荒れ果てた国土を水害等から守るため、また、木材資源を確保するため、全国的に木が植えられ森林の再生が図られました。

 その結果、人工林を中心に充実しつつありますが、まだ成育過程にある森林も多く、輸入材に頼らざるを得ない状況にあります。


森林の機能 / 森林資源の現況 / 森林の整備 / 林産物の生産



1.森林の機能


 森林は、木材の供給をはじめとして、国土の保全、水源のかん養、 生活環境の保全・形成、保健休養の場の提供、さらには二酸化炭素の吸収、 固定、貯留等の多様な機能を発揮していることは以前にも紹介しました。

 このほか、最近では、森林に生息する多くの動植物の生態系を維持する ための機能に対する関心が高まってきており、このような生態系を維持 していくための活力ある森林を持続可能な形で利用していくことが必要 となってきています。
 森林には、水資源のかん養、土砂流出防止、土砂崩壊防止、保健休養、 野生鳥獣保護、酸素供給・大気浄化といった市場価格の存在しない機能が ありますが、これを同等の機能をもつとみられる施設の建設等に必要な費用 で代替評価すると、平成3年時点では年間で約39兆円となり、森林の 公益的機能の大きさを端的に示すものとなりました。



2.森林資源の現況


 日本の森林面積は、平成7年3月末現在、2,500万haで国土面積に しめる森林の割合は67%、蓄積(木材としての体積)は35億立方メートルであり、 その蓄積は毎年7千万立方メートルずつ増加しています(表1)。

 このうち人工林面積は、約1,000万haあり、スギなどを中心に蓄積 は年々増加していますが、7割が保育・間伐が必要な年齢で育成途上にある ことから、引き続き適切な森林整備を実施していく必要があります。

 天然林(人工林のように植栽をせずに自然に成育した林)についても、 蓄積は年々増加していますが、その5割は50年生以下の比較的若い 森林であり、多くはかつて薪炭林等として利用されていた広葉樹林です。

 他方、年齢が高く蓄積の多い天然林は一般に奥地にあり、国土の保全 、景勝の保護等の観点から、保安林、自然公園等に指定されていること が多く、木材としての利用との調整が必要となっています。



3.森林の整備


 我が国は、高温多湿の気象条件下にあり、植物の成育に適しています。 しかし、ツルやササ類が繁殖し易く、樹木の生育を阻害する要因の一つとなっています。  このため、森林を維持・造成し、永続的に利用していくためには、森林の 状況に応じ、下草刈り、ツル切り、除伐等の保育、間伐や適切な伐採の実施 など、適正な森林管理が不可欠となっています。

 戦争中、乱伐され、さらに人手がなくなり手入れできず荒廃した森林の 復旧を目的として、国土緑化運動が戦後間もなく開始され、現在、植樹祭 等による緑化思想の普及啓発活動、緑の少年団等の緑化活動など、国民が 幅広く参加した各種の活動が展開されています。

 また、「緑の羽根募金」運動が進められ、その寄付金を利用して、 一般市民参加の植樹活動、青少年の林業体験活動等が実施されています。

 このほか、近年、森林のもつ公益的機能に対する国民の関心の高まりを 背景として、上流の森林整備に対する下流域からの費用負担、ボランティ アによる労働力の提供等様々な手段による森林整備の取組がみられます。



4.林産物の生産


 我が国の木材の需要量は、平成元年以降、丸太換算で1億1千万立方メートル 前後で推移しています(表2)。

 しかし、生産コストの増加にもかかわらず、木材価格は長期間低水準にあること (表3)や資源的制約から、木材の生産量は、昭和42年の5,181万 立方メートルをピークに減少傾向にあり、平成6年には2,446万立方 メートルとピーク時の半分以下となっています。

 また、自給率も減少傾向にあり、平成6年は22.4%まで落ち込んで おり、輸入材への依存度が高い状況が続いています。

 しかし、国産材は戦後造成された人工林が成熟してきており、今後、 供給力が高まり生産量、自給率ともに増加することが見込まれています。




表1 日本の森林面積と蓄積

人工林天然林 その他合  計
面積(ha) 1,0401,338 1372,515
蓄積(百万m2)1,892 1,59013,483
※その他は岩石地、竹林等
(出典:平成7年度林業白書)


表2 木材需給量と生産量の推移

平成元年度 平成2年度平成3年度 平成4年度平成5年度平成6年度
木材需要量(万m2) 11,38511,11611,217 10,84910,82710,932
木材生産量(万m2) 3,0522,9302,794 2,7112,5572,446
木材自給率(%) 26.826.424.925.0 23.622.4
平成7年 木材需給報告書から抜粋


表3 丸太価格の推移(単位:円/m2)

スギ丸太
径14〜22cm
長3.65〜4m
ヒノキ丸太
径14〜22cm
長3.65〜4m
昭和55年 39,60076,600
平成元年25,900 66,200
2年 26,60067,800
3年25,600 65,700
4年23,200 59,100
5年23,900 59,100
6年22,900 58,000
平成7年 木材需給報告書から抜粋




「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1997年5月 第33号


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