森林の資源と働き

 わが国は、雨量が多く、気候も比較的温暖で樹木の生育に適しています。また、国土が南北に細長く、かつ背梁地帯には高山が連なり、緯度差及び標高差が大きく、気候の変化も顕著です。このため亜熱帯林から亜寒帯林にわたる森林帯が分布しており樹種も非常に豊かです。

 人との関わりが深い森林資源は、燃料としての薪・炭をはじめ農耕具、紙、衣服、薬や気候風土に適した木造住宅、寺院、彫刻などの工芸品等へと木材を幅広く利用し、生活に活かす「木の文化」を育ててきました。また、森林は水を蓄え、災害を防ぐなど私たちの生活環境を守る多くの働きがあり、忘れてはならない重要な機能です。

 今回は森林資源と森林の持つ働きについて触れてみます。


日本の森林資源 / 森林の機能



1.日本の森林資源


国 名森林面積
(千ha)
森林率
(%)
国民一人
当たりの
森林面積(ha)
フィンランド 23,000 694.7
日本 25,000 670.2
ブラジル 563,000 664.1
旧ソ連 935,000 423.3
カナダ 326,000 3312.7
アメリカ 265,000 281.1
全世界 4,030,000 300.8
資料:FAO「年鑑1991」
 日本の森林は、国土面積の67%に当たる約2500万haを占めており、森林率では世界でも1、2を争う森林国です。ところが、これを国民一人当たりの森林面積に直すと約0.2ha。世界平均の0.8haに対し4分の1と他の国々に比べ少なくなっています。

 森林面積を林種別にみると人工林は約1025万ha(森林面積の41.7%)、天然林は約1352万ha(55%)、その他(竹林等)約82万haとなっています。

 森林の総蓄積量(木材としての体積)は約30億立方メートルで、昭和55年〜平成2年の10年間で約6億立方メートル増えています。人工林と天然林とでは、共に約15億立方メートルと同等になっています。スギ・ヒノキなどの針葉樹とブナ・ナラなどの広葉樹とで蓄積量を分けると、針葉樹が約19億立方メートル、広葉樹が約11億立方メートルです。




2.森林の機能


水源かん養機能


 森林の土壌はスポンジのように柔らかく、大小さまざまな空隙があり、雨 水や雪解け水を地中にしみこませる能力があります。しみこんだ水は地中に 蓄えられ徐々に流れ出すため、長い間雨が降らなくても森林に囲まれた川の 流れは比較的平準化しており絶えることはありません。

 森林の土壌が水を吸い込む能力はグランドなどの裸地に比べ約30倍もある といわれています。このように森林は人工のダムと同じように洪水や渇水を緩 和する働きをしており、まさに「緑のダム」といえます

国土保全機能


 わが国は国土の約7割が山地であり地形は急峻で地質ももろく、 そのうえ台風、集中豪雨などにしばしば見舞われることから、山崩 れや洪水などの災害が起こりやすい状況にあります。

 森林は、そこに生育する樹木が土中深く張りめぐらせた根により 、土壌をしっかり押さえるとともに、立木(生えている樹木)、下 草(森林の下層部を占める草やかん木)、落葉、落枝が地表面をおお っているため、雨水等の多くは地表面を流れることなく地中へと浸み こんでいきます。このため、浸食や土砂の流出を防ぐ効果があります。

炭酸ガスの吸収


 植物は光合成により大気中から炭酸ガスを吸収し酸素を放出します。 植物体1Kgをつくるのに約1.6Kgの炭酸ガスを吸収し、約1. 2Kgの酸素を放出します。陸上の巨大な植物である樹木、特に森 林については地球の温暖化の原因といわれる炭酸ガスを固定する大 きな貯蔵庫であり、同時にその他有機物質の吸着・吸収を行い、空気 をきれいにします。

 ちなみにヒト一人が1年間に吸う酸素の量は、スギの木約16本が1 年間に出す酸素に相当すると言われています。

 このほか、森林は風、霧、騒音などの緩和、なだれの防止をはじめ、 さまざまな生物などが複雑な食物連鎖を構成している生態系として、また、 動植物の生育の場として重要な役割をはたしています。さらに森林浴やハイキ ング自然観察等レクリェーションや教育活動の場としても役立っています。



「大きな目小さな目」(全国版)
(農林水産消費技術センター広報誌)
1994年5月 第15号


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